「ごきげんよう」
肩に力の入っていない自然体のほほえみに、祐巳の胸はいっぱいになる。そこにいるのは、間違いなく素顔の瞳子ちゃんだった。
cite ( 今野 緒雪『マリア様がみてる (あなたを探しに)p96』 )
たとえば。1999年の大晦日、新世紀の幕開けを祝おうと、「10、9、8,7〜」とワクワクしながらカウントダウンに参加していたら残り一秒で巨大時計の秒針が止まったかのような、そんな感じ。こっちはクラッカーを鳴らす準備も万端ですのよ?
とまあそんなじれったさはあるもののそれが不満にならないのは、もうみんな、表にはあらわれずとも時間は進みすでに新しい世紀は始まっていることを知っているからだ。おめでとう、というより、よかったねぇ、という言葉の方がふさわしい。
今回は、前回のバレンタインイベントで当選した3人の三薔薇(のつぼみ含む)とのデートの模様が綴られる。それぞれが、デートの過程で「本当の自分」を取り戻す、いわばマリみての基本とも言える話である。祐巳と瞳子のパートも含め、いずれもよい話だった。特に白薔薇パートはひねりが効いていた。赤以外はキャラクタに思い入れがない分フラットな気持ちで読める。
土日にポツポツ遊んでとりあえずクリア。意識してネタバレの情報を耳に入れないようにしていたので、第5層からの流れには感心した。ああ、メガテンの会社なんだなあ、とか。第4層、第5層は音楽もよかった。レベル上げすぎたせいかラスボスもあっさり倒せた。けっこう満足したので「もうこれでやめてもいいなあ」と思ったのだが、ためしに第6層に潜ったら雑魚にあっさり倒されて笑った。もう少しだけ続ける。
帰りに読む本が無かったので駅近くの本屋で購入。とりあえず二冊買ったのだが、次の日残りも買った。きわめて面白い。菌が肉眼で見える特殊能力を持った主人公が某農大に入学したところから始まるキャンパスライフの話。ちまたで話題に挙がるのはディフォルメされた細菌の絵ばかりなので、こんなマトモな話だったとは思わなかった。
教授が人格者じゃない所がいい。ほんと、大学の教授って程度の差はあれマトモな人のほうが少ないと思う。
人工的に身体の線を作りあげるような衣服はやめたほうがいいんじゃない?とか、すっぴんのほうがいいよ!とか、ある男性に言われた。
彼の真意は別として、そういった女性に対するナチュラル志向というのは、支配欲からくるものなのだろう。
彼らが欲しいのは自分好みに作り上げるための素材としての女性であって、自分の身体(容姿)を自分自身でコントロールしている者ではないのだ、おそらく。
ロリータファッションは、自分はあなたのための素材ではなく、自分自身のための素材なのだという意思の表明のように私には思われる。自分で自分を着せ替えできる人形には、御主人様なんて必要ないのだから。(以下略)
cite ( 二階堂奥歯『八本脚の蝶:2001年11月17日(土)』 )
過去や未来に問題を抱える登場人物ふたりがボンテージやゴスロリという特徴的なファッションに身を包んでいるのは、きわめて意味のあることだと思う。過去の自分とはちがう、自らの意思によってのみ作り出したペルゾナ。それは、ふたりにとって何よりも必要なものなのだったのだ。ゴスロリが主人公と再会した後、普通に物語の中に登場するようになったのは、主人公に正体を気づかれなかったからだ。それによって、今の自分は過去とは切り離された存在と確信出来たからこそ、”別の自分”として物語の舞台に上がることが出来たのである。
彼が主人公にキスをしたのも、その(自分は別の存在であるということの)意思表明なのだろう。彼が主人公を好きだという感情は、”造り酒屋の一人息子である”彼にとってはあってはならないものなのだから。さらにうがった見方をする。この感情は、どれまでが自分自身のものなのだろうか?幼なじみであるということ。造り酒屋と麹屋の跡継ぎ同士という、離れがたい関係であるということ、それらから切り離されたとき、存在しうるものなのだろうか?その問いが彼にはあったのではないだろうか。それに対する答えを得た、その確信が、彼にあの行動をとらせたのではないだろうか。そう考える。
追記。
もっといい引用箇所があったはずなんだけどなあ。見つけられなかった。サイトの検索は機能していないように見える。おそらく閉鎖された旧サイトを検索してるんじゃないか。
分厚いハードカバー、しかも上下巻ということでスルーしていた。雑誌『switch』にて北上次郎氏が絶賛していた、その紹介を読んで興味を覚え購入した。北上次郎、ありがとう。
これは傑作ですね。例えば、僕がこの作品を読んで連想したアン・マキャフリイ『パーンの竜騎士』、宮崎駿『風の谷のナウシカ』がそうであるように、あるいは小野不由美『十二国記』が、荻原規子『空色勾玉』がそうであるように、十年、二十年と世代を超えて読み継がれるべき作品だと思います。