おお!新創刊だよ!いいねぇ。うきうきするねぇ。この徳間デュアル文庫、版型がちょっと特殊で、こういった類のレーベルはえてして短命に終わるものだが(B6変形のカドカワエンタテイメントはどうなったのでせう?)それは今は考えないことにしておこう。イラストが結構はでで、ヤングアダルトのちょっと上あたりを狙っている感じか。
さっそく創刊第1弾をチェックしよう。銀英伝は無視。徳間は銀英伝で商売しすぎだろ?後書き代わりの田中芳樹インタビューのみ立ち読む。”らいとすたっふ”による、マッチポンプの極みともいえるたいこ持ちな内容に呆れかえった。
代わりというわけではないが、田中先生原案のこの作品を読んだ。内容はスペースオペラなのだが、う〜ん、田中芳樹してるぞ!。宇宙が舞台といいつつ話のメインが人間同士の政治、謀略で進むところとかね(ほめてるつもり)。元気がいいだけで深みの無い女性キャラクターまでも真似る必要は無かったのでは、とは思うが。
予想以上の感動や驚きはなかったけれど、安心して楽しめる作品。田中先生はタイタニアの続きも荻野目さんにお願いしてみてはどうだろう?
続いてはブギーポップシリーズでおなじみの上遠野さんの新作。
いや、素晴らしい!創刊第1弾ではこれがベストだね!!(とはいえ純粋な新作は上とこれの2作しかないのだが)。
まず、これはすぐれた青春小説である。上遠野さんは、高校生の微妙な心理をえがき出すのがうまい。毎日だらだらとすごしていることに内心苛立ちを感じながらも結局何も出来ず、そのくせ自分は他人とは違う特別な存在だと思っている、自意識過剰な所とかね。それが、本当に自分は特別な存在で、しかも今いるこの世界はニセモノだということに突然気付かされたら?というのが今回の話。すでにビミョーなお年頃はとっくに通り過ぎた私にとっては「ああ、こんな頃もあったなぁ」という懐かしさ以上のものはないのだが、クラスのはぐれ者である少年がラスト少女の前で感じる心のゆれは、これぞ青春である。
SFとしても読み応えがある。仮想世界と、疑似人格、人間の意識への考察は、けして新しいものではないがステレオタイプに堕してもいない。神林長平の幾つかの作品と似たような印象を受けた(「猶予の月」とかね)。システムのフリーズによる仮想世界の位相の変化が起きた時、あるいは終盤星々が視界全体に広がる際のイメージの広がりは、SFならでは。
いや、読んで良かった。最近は安定傾向にあった上遠野作品(とはいえかなり高値安定だとは思うが)において、久々にキレのある話。
「これからは SF の時代だ!」と角川春樹が言ったかどうかは知らないが、ハルキ文庫からまとめてSF 作品が発売された。先日の徳間デュエル文庫といい、来るのか?ブームが。けっこう期待しつつ書店で早速チェックしてみたのだけれど…目新しさが全く感じられないぞ。80年代の香りプンプン。復刊作品や中堅どころの作家さんの作品はともかく新人作家さんの作品までもどこか古めかしいのはなぜでしょう?今回は全捨てですね。電撃文庫の方がよっぽど SF しておる。