幻の黒猫

2000年の日記もどき:2月

2.10.2000

今月の電撃文庫は、異様に質が高い。ヤングアダルトではいま一番元気がある文庫では。

[book][か]「ブギーポップ・ウィキッド エンブリオ炎生」上遠野浩平:電撃文庫(2/10)

2000/02/10

「ブギーポップ・カウントダウン エンブリオ浸蝕」の後編。相変わらずのブギーポップ節。シリーズを初めて読んだ時の衝撃はもはや無いが、水準以上のクオリティを保ちつづけているのは立派。時系列を別にすれば、次々と浮かび上がる泡に始まりも終わりも無いように、この物語にもきっと明確な終わりは無いだろう。だからとりあえずは、続く所までこのシリーズに付き合っていきたい(と、今は考えている)。

2.11.2000

[book][ま]「リングテイル 勝ち戦の君」円山夢久:電撃文庫(2/11)

2000/02/11

この小説は第6回電撃ゲーム小説大賞の大賞受賞作品…なんだけど、電撃文庫的な内容じゃない。偕成社あたりから出版されてもおかしくないと思える。

ストーリーもその内包するテーマもファンタジーの典型で、YA文庫に腐るほど見受けられる えせファンタジーとは一線を画する物があるのだが、それがかえって電撃文庫のなかでは浮いた存在となっている。

こうした作品に大賞を与えるのは出版社の良心といえるかもしれないが、商売としては苦しいんじゃなかろうかと要らぬ心配をしたりして。

[book][な]「ダブルブリッド」中村恵里加:電撃文庫(2/11)

2000/02/11

第6回電撃ゲーム小説大賞の金賞受賞作品。世界に、人とは異なる「怪」と呼ばれる種族が共存するようになった近未来が舞台。「捜査六課」は、「怪」が起こす事件を専門に捜査する組織で、優樹はそこのただ1人のメンバーであり、自身も「白髪鬼」と呼ばれる「怪」である。そこに、特殊部隊から普通の人間、山崎が派遣されてくる。そして…

う〜ん。うまくまとめてはいる。しかし、現代を舞台に鬼(あるいは人外の妖の類)が登場する似たような作品は山ほどあって、今思い付くだけでも「妖魔紀行」、奥瀬サキの傑作コミック「こっくりさんが通る」、「うしおととら」、「鬼切丸」、ゲームだと「アトラク=ナクア」、「痕」、マニアックな所でゲームブック「送り雛は瑠璃色の」などなど。それらは多かれ少なかれ人の中で生きる異種族の悲しさがテーマに含まれる。そして「ダブル・ブリッド」がそれらの作品を越えることが出来ているかというと、難しい所だ。

山崎君が恐怖を乗り越えるきっかけが(意図的に?)書かれてないので、エンディングの甘々さにリアリティが無い。人とそうでない物とが分かり合う過程をしっかり描きたいのなら、優樹が本性を明かしてからエンディングに持っていくまでに、もう少し書き込みが必要だろう。

回収されてない伏線や後巻への引きが目立ち、はじめからシリーズ化を前提とした作品に思える。本になる際に追加したのなら話は別だが、一冊で完結していない話に賞を与えていいものなのだろうか?

それはさておき、優樹ちゃんかわい〜!ちょっとたら〜んとした独特のしゃべり口調がよい!(とはいっても、「〜ですぅ」とか「〜にょりん(<適当に今造ってみた)」みたいなアホなオタクうけのしゃべりかたじゃ無いので安心してね)

2.12.2000

[book][い]「若草野球部狂想曲 サブマリンガール」一色銀河:電撃文庫(2/12)

2000/02/12

同じく銀賞受賞作。ファンタジーの要素のまったくない、理論派野球学園小説。

小説内に多発するギャグを100%楽しむためには、ひと昔前のプロ野球の知識が必要。…きっと野球に興味の無い人は分からないんだろうなぁ。俺なんかゲラゲラ笑いながら読んじゃったけど。

とはいえ、章間には丁寧な野球講座が挿入されるので、初心者でも大丈夫。感心したのは、女の子が半数を占める弱小野球部が甲子園優勝校と試合をしてそして勝つ過程に、奇跡や根性論が介入しなかったこと。普通ならうそくせぇと思うような展開でも、確かな戦略で展開される理論で、すんなりと納得させられた。やっぱ野村ID野球だよなぁ。

2.15.2000

[book][く]「グイン・サーガ70 豹頭王の誕生」栗本薫:ハヤカワ文庫(2/15)

2000/02/15

もはや惰性で買っているシリーズなのだが、グイン結婚記念書き。ケイロニアが舞台でグイン主役の話の巻はどれも結構好きなのだ。

2.22.2000

[が]■「フルメタル・パニック! 揺れるイントゥ・ザ・ブルー」賀東招二:富士見ファンタジア文庫(2/22)

シリーズの本編第3弾。初めて読んだこのシリーズがドラゴンマガジン本誌での短編だったこともあって、(ふ〜ん。つまりは「スレイヤーズ」 -> 「オーフェン」系富士見お得意の破壊的ギャグパターンね。)としか最初は思わなかった。しかしごめん!私が間違ってました。面白いぞ!

短編では繰り返しギャグのネタとして用いられる主人公の戦争ボケな一面が、本編では普通の女子高生であるヒロイン、かなめとの対比で彼が一般人ではないことを表すいい設定と作用している。単なるつっこみ役にしか見えなかったかなめちゃんも、自分の弱さを知った上で強くありたいと願う、中身のある人間として描かれ、共感できる。

そしてなにより一押しなのはテッサことテスタロッサ嬢である。イラストを見た時は「…ルリ?」とつぶやいたが、そのけなげに頑張る美少女っぷりにもうイチコロっす!オレは君を応援するぞ!かなめちゃんもそうだしマオ姐もだけど、登場する女性キャラがみな魅力的でいい。

本編を読んでから改めて短編集を読むと結構楽しく読めちゃうのが、人間の認識のあいまいな所だねぇ、とひとごとのように。とにかく、オススメ。

あ、あとオーバーテクノロジーなガジェットが創造される元をアカシック=レコードにもってきたのは面白いと思った。

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