角川から出版されている同名コミックが、原作者と漫画家のコンビはそのままに小説化されたもの。以前、コミック版を漫画情報誌「ぱふ」でそこそこ評価されていた事もあり読んでみたのだが、その時はさして面白いとは思わなかった。だけど、今回の小説はなかなかいいなぁ。
若草4姉妹は実は宇宙人で、常人ではない力の持ち主。普通の人間として日々の生活を送っていたが、ある日事故に遭いそうになった子供を助けようと三女の結里が能力を使うところを、クラスメイトの嵯峨に見られる。
「まずい!普通の人間じゃないことがばれた?」とどきどきする結里に、嵯峨はなんと交際を申し込んできた…
とまあ、設定はSFチックながらその実甘々青春ものである。なんかね、ほのぼのとしてオフビートな展開がいいんだ、これが。汚れきった俺の心が洗われるような感じ?イラストの船戸明里さんも、漫画とは絵柄をがらりと変えてきて、それがまたいい。
コミックが4姉妹に万遍なく焦点をあてようとして却って拡散した印象があったのに対し、小説では三女の結里をメインにすえることで筋の通ったものとなっている。作者には続きを書く意志があるらしいので、つぎは次女を望む!
女性作家によるアンソロジー集。作家陣の中に「恩田陸」の名前が目に留まり、読んでみたらこれが大当たり。しかし、専業作家となって以来いたるところに出没するなぁ恩田陸さんは。話のタイトルは「睡蓮」。主人公の女の子の名前が理瀬で、男性とも女性ともつかぬ妖しい人物も登場するという「三月は深き紅の淵を」を読んだ人はニヤリとするような設定。当作品と前述との間に連続性はなく、パラレルワールド、あるいは同じ役者による別のストーリーといったところか。しかし、話のテーマには、繋がるところもあるように思えたので、気になる人は「三月は〜」も読もう。
他の収録作品も目を通してみたが、今一つだった。漫画家榎本ナリコが小説で参加していたところが珍しかったくらい。
シリーズ最新刊。魔女となるべく、「楽園」と呼ばれる辺境の地で修行の日々をおくる4人の少女たちを描いたお気楽ファンタジィ。今回は楽園に吸血鬼が登場。いつものようにドタバタ騒動が繰り広げられる。いいかげんマンネリ化しているのは否定できないが、別にそれは悪いことじゃないよね。水戸黄門だって寅さんだって(渥美清死んじゃったけどさ)そう。要はキャラがちゃんと立ってて、そしてそれを十全に生かせるようなストーリーになっていればいいだけのこと。そして、このシリーズはちゃんとそれが出来ていると思う。
「猫の地球儀 焔の章」の続編で完結編。地方在住者である都合上(本の発売が遅れるのよ)、すでに読み終えた方たちが読書サイトで公開しているこの本の感想を読んで覚悟はしていたのだが、やはり泣かされてしまった。しかも「ええ話や〜」ではなく「せ、切なすぎる〜」な涙。秋山先生ってば、なんでこんなにうまいんでしょうか。
前回同様、物語にノックアウトされて内容を語ることが出来ない。語りたいのは山々なんだけど、僕ごときが何を書いても、この小説の素晴らしさを伝えることが出来ない気がする。とりあえず今は、読めとしか言えない。
というわけで、内容は別にして、技術面での感想を書く。構成に難があるという指摘をみたが、それは、この物語ではこれがベストだ、と僕は思う。ストーリーの都合上、焔と幽が出会ってからはノンストップで進行しなければならない。2匹の生命の軌跡が、たった2回のバトルを通して一瞬だけ交差するからこそ、それがかけがえの無い物になるのだろう。だから、前の巻がとろくてこの巻が急ぎすぎな展開に見えるのも、しょうがないと思う。個人的な希望を言えば、全3巻にして 1.焔の過去、2.幽の過去、3.バトル&スカイウォークというふうに、2巻で引っ張っておいて最後に爆発!な展開にして欲しかった。この作者のシリーズを1巻でも多く読みたいってのもあるかもしれないけど。
ただ、設定やエピソードをあえて語り尽くさないことによって物語に深みを与えるという作者の手法が、今回は裏目に出ているように見える。例えば円親分の話(一団が全滅する場面があっけなさすぎる)や実は偉いらしい坊主、霞の話(こいつって過去がわけありっぽいんだけど)など、一つひとつがぶつ切りに置かれ、有機的にからんでこない。読んでる最中には話の展開に引っ張られて気にならないのだが。
以下雑文。浅田次郎でも「アルマゲドン」でも「シックスセンス」でも泣かなかった俺なのにねぇ。洗剤の粉を渡すシーンやクリスマスが再び箱で眠り続けるところ、そして幽が最後に見た一面の青!こう書きながら思い出すだけで、瞳がうるうると。純情少年か、俺は。なんだろう、きっと作者は、俺と同じで奇跡や根性、お約束な展開が嫌いなんだろうなぁ。ほのぼのさせた次の瞬間に、すとんと深い裂け目を見せる、「だって現実ってそんなもんでしょ?」っていう作者の声が聞こえてきそうだ。そうだよねぇ。根性で地球にいけたら、スカイウォーカーも苦労しないよね。
最後、XXXXXX が開かなくて苦戦する幽の前に XXX の幽霊が現れてここで回想シーン、例の場面を思い出したところで奇跡的に XXXXXX が開いてやった〜!ってな展開には、この作者は絶対にしない。だからこそ、そのすぐ後、焔が「合図」を見る場面が感動を呼ぶのだろう。ゼータガンダムの最終回に、フォウやサラ、ロザミー達の霊の能力を借りてシロッコに特攻したカミーユとは正反対ですな。分からん人はまったく分からん例えですまない(笑)(追記:サラはシロッコを守ろうとしたとの指摘あり。そうだったっけ?)
今思うと、E.G.コンバット3でカデナが助かったのは(ネタバレ)僥倖だったわけね。次巻予定はE.G.ファイナルだが、ルノアと部下5人+1が必ず生き残るという保証が全くなさそうなのが恐いところ。とりあえず、覚悟だけはしときます。
昨年「ハサミ男」でさっそうとデビューした殊能将之さんの新作。まずは、このタイトルがミノタウルスとの引っかけであることに気づき、大笑い(嘘)。前作がポップな?サイコものだったのとはうってかわって、「八つ墓村」的田舎の旧家が舞台のどろどろ土着ミステリ、な「設定」。
とはいえ、この作者のことだから簡単にはいかない。舞台設定そのものを一番のトリックにして、ぬけぬけと罠を仕掛けている。端正な文章と巧みな展開にひっぱられ読み進んで、謎の究明が終わったときには、今までの認識とはまったく異なる世界の構成が目に見えるようになる。お見事!
気になったのは、探偵役が最後に見せた奇矯な性格と、探偵とその助手が共に若い男なところ。御手洗x石岡で味を占めた講談社が、「やおい推奨型ぱふ系読者」を取り込もうとしているんじゃあないの?と、要らぬ勘繰りをしたくなった。
タイトル不明なのは、本屋で流し読みしただけだから。キングの「グリーンマイル」の向こうを張って6ヶ月連続でリリースされるらしいシリーズものの、第1巻。田島昭宇さんの表紙が美麗すぎて目に留まった。大丈夫か、田島さん。仕事はちゃんと選ばないとだめだぞ!え?小説の内容?それは(以下略)
…新刊読んでないな。今「枕草子」にはまってて、現代語との対訳版を1日1段くらいずつ読んでいる。いやぁ、面白い。日本の古典をなめちゃだめだね。さらに手を伸ばして、平安女流文学を研究した国文学の資料も読み漁ってるのさ。清少納言、あんたかっこいいぜ!
おすすめ本
「かぐや姫の反逆 「源氏物語」をとりまく作品」長塚杏子:三一書房
今まで榛野なな恵の作品にあった「ぬるさ」のみじんもない、緊張感にあふれた力作。これまでそれをほのめかすような話はあったが、今回はずばりそのものの百合作品。作者は常にマイノリティ側から世界をえがき、家庭愛、とくに母性愛に強い反発を示してきたが、その由来がここにある、といったら言い過ぎだろうか?
とりあえず俺は、全面的に支持する。読むべし。
シリーズ第6弾。前編の続きで、今回は、ラブラブデート大作戦!、なぬ?幼稚園児の祥子さま!?、薔薇さま方は楽隠居、の3本立て(サザエさんか…)。
このシリーズの素晴らしいところは、シリーズを通して存在する「姉妹」というシステムが単に百合的ストーリーを展開するための道具ではないということ。それは元々の由来どおり「姉が妹を導くように」先輩が後輩を指導するためのものであり、作中の登場人物たちもそれに自覚的である。この巻の p16-17 の白薔薇さまの言葉は、だからこそ重たく、同時にやさしさにあふれたものになるのだと思う。
すぐに「運命」だとか「永遠」だとかのたまう凡百の百合やボーイズラブ、あるいは普通の恋愛ものでもいいけど、それらを遥かに超越しており、必読のシリーズである(断言)。「女子校のお姉様もの?ちょっとねぇ」と言っているあなた!そんなんで毛嫌いするのは損ですって!
おまけ。
「〜それから、ほんの少し未来の話を。」(p90)
なんていい台詞!この台詞を読んだだけで、この本を買ってよかったと思ったね。本編の中ではどうということもない言葉なんだけど、呼んだ時の印象が温かく、まさしく未来にひらけた印象が感じられた。