幻の黒猫

2000年の日記もどき:10月

10.4.2000

[book][さ]「竜が飛ばない日曜日」咲田哲宏:角川スニーカー文庫(00/10/04)

2000/10/04

羽井貴士と藤谷瑞海は、ある日竜の姿を目撃した。驚いたことに、彼ら2人以外の人間はいつのまにか竜の存在を当然のように認識しており、それどころか、竜は人間より上の神聖な生き物として、それに食べられることが最大の喜びと考えるようになっていた。

2人はそんな世界になじむことが出来ない。なぜ、いつから、竜はいるのか?彼らは調べ始めるが、竜達がそれを妨害する。また、周りの人間たちも、竜が存在することを否定する2人を不審がり、次第に敵対視するようになる。竜の存在を信じることで調和しようとしている世界にとって、2人のそんな言動は異端な行為であるからだ。

”守護竜”が人間を餌とする「補食の儀式」が迫り来るなか、やがて2人はこの世界の秘密へと近づいて行く…。

はっきり言って、世界観の造り込みは甘い。ネタバレをさけるが、なぜ気づいたのは2人だけなのか?なぜ1つだけ願いが叶うのか?そもそもなぜ竜だけなのか?それら全てを「願い」の一言で片づけられては、困ってしまう。

あるいはこの作品が、第4回角川学園小説大賞の優秀賞受賞作品であることを考慮すると、竜とは現実の学校社会の”力”のメタファとして見ることも出来る。学校という閉じた世界で、管理され個性を削られた生徒たちの中で特別な自分でありつづけようとしたら、時にそれは闘いと呼べる行為になるだろうし、本来目に見えないその相手を、例えば竜として喩えることが出来るだろう。

ただねぇ。竜という”力”に対して、貴士も結局”力”で対抗するのはどうだろう。竜を頂点とした世界で竜使いになることによって事態を解決したのは、結局、より強い”力”を(しかも敵であるはずの竜の名を借りた!)使ったことにしかならない。それでは問題の本当の解決にはならないはず。ただ、最後竜を殺さなかったのがひとつの救いか。

テーマとしては+「ぼくらは虚空に夜を視る」とほぼ同じ。こうしてみるとやはり上遠野さんはうまいなぁ。とはいえ、1作目にしては文章もうまいし、構成もしっかりしている。とりあえず次作に期待してみましょう。

10.21.2000

[book][ほ]「Alone together」本多孝好:双葉社(10.21.00)

2000/10/21

…村上春樹?

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