幻の黒猫

2007年の日記もどき:7月

7.12.2007

[book] [の]「 マルタ・サギーは探偵ですか? 5 探偵の堕天」野梨原 花南:富士見書房(富士見ミステリー文庫)

2007/07/12

たまに、ふいに、こういう奇跡のような物語が現れる。前作がいわゆるレイニー止めだったので続きは気になっていたのだけれど、書店で目にするまで新刊出ているのを知らなかった。なんの予備知識無しにこの本を読めたことに感謝。まずは人物紹介のイラストで衝撃を受け、そして第一章一行目。完璧にノックアウト。こ、これは傑作です。

  • 以下箇条書き。
  • いっけん長編第3話の焼き直し(=行って、帰る)のように見えながら、だからこそ、それとの決定的な差異、ある人物の不在が重く影を落とす構成の妙。
  • これは作者にとっての『魔性の子(小野不由美)』ですね。”あちら”から戻ってきた人間が、また”あちら”に帰っていくまでの物語。
  • かつてこの世界に居場所のなかった主人公は、無理やり引き戻された今、初めて”こちら”で居場所を得る。はじめての親友、彼を好きになってくれる可愛い女の子(本当にいい子なんだ!)etc...。それらは、”あちら”で得たものと同じくらい尊い。だからこそ生まれるラストのせつなさ。
  • クレイとの件で酷くトラウマを負ったマルタにとって、最後まで裏切らない信の存在は大きかっただろうな。名前に”信じる”の漢字が使われているのも、あるいは意味があるのかも。
  • 本全体が、パッケージとして完璧。表紙、口絵、人物紹介からイラストを入れる箇所まで。物語とうまく寄り添い読む人間の感情をナビゲートする。
  • 「馬鹿なんだから」「あほ。」「ホント最低ですよね。」これらの言葉に隠された意味。ことの真相がわかってから読み返すともう・・・。

うん。これはマリみてにおけるレイニーからパラソルのセットと同じくらいやられました。ライトノベル的な、キャラの立ち位置が決まりそれで幾らでも続けられそうな空気が出来上がったからこそ出来る大技です。次巻が楽しみ。

7.14.2007

[book] [か]「神無き世界の英雄伝」鴨志田 一:メディアワークス(電撃文庫)

2007/07/14

どれだけ銀英伝やねん、とか。以降のスペースオペラ(タイラー、でたまか、星界の紋章etc)が元祖をふまえつつオリジナリティを出していたのと比べ、あまりにもそのまま過ぎる。企業連盟、電子妖精など追加されたガジェットも古めかしい。戦術が〜とかSFとして〜とかいいたいことは多々あるが、まあそれは言うのはやぼか(*1)。なんだかんだいいつつ続きが気になるのでたぶん次巻も読む。

[book] [う]「悪魔のミカタ666 2 スコルピオン・テイル」うえお久光:メディアワークス(電撃文庫)

2007/07/14

”666”1巻を読んで少年少女の成長譚としての側面がクローズアップされたことに感心したが、それに加え今作で、推理小説としてもそれなりの評価を受けたシリーズ1巻の空気が戻ってきてビックリ。ミステリが成立するには”探偵”の存在が必要だということだろうか?

以前より、「ある男性と彼ををめぐる複数の女性たちによって繰り広げられる物語」いわゆるギャルゲー的世界において語るべき物語があるとすれば、それは男性がひとりの女性を選ぶまでの物語ではなく、彼らによって形成される共同体そのものの成立そして崩壊をめぐるそれなのではないか?と考えている。そういった意味でも、このシリーズがどのような着陸をみせるか、とても楽しみ。

*1: 元祖(=銀英伝)もそうなので。
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